かえるのれきしたい

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漫画感想:忘却のサチコ

 

 漫画感想というと,食事・料理漫画のほうが,いいやということで,忘却のサチコというタイトルからは,なんの漫画かわからないが,所謂グルメ漫画です.

 忘却のサチコの題名の通り,この漫画は忘却,もしくは忘我するために,美味しいものを主人公のサチコが食べようと奮闘する漫画.

 主人公のサチコ(表紙の人)は出版社に務める敏腕編集者.彼女と俊吾さんの結婚式が,この漫画の第一話,しかし結婚式の最中に,俊吾さんが失踪する.

 

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 この失踪後,サチコの脳内では,事あるごとに俊吾さんのことをフラッシュバックし,日常生活に支障が出始めるのであった.

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 そして,ふと入った定食屋で食べた鯖味噌定食,その美味しさに俊吾さんのことを忘れることができたサチコは,俊吾さんのことを忘却するために,美食を求めるようになる,というのが第一話のあらすじである.

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 というわけで,このあとの話もサチコが美味しいものを食べては,忘我状態になるという話.食事・料理漫画として,特徴的なのが,単に美味しいものを食べようとするのではなく,忘却するため,という妙なロジックが入っていること.このロジックが入っているおかげで,この漫画の料理・食事は妙に美味しそうにみえるのである.

 そもそも,サチコという主人公は,所謂有能奇人変人系主人公で,有名なところだと柳沢教授とかに似ている感じである.

天才柳沢教授の生活(1) (モーニングコミックス)

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 基本的に合理主義者で,感情の起伏が激しくないようにみえるように造形されている.そのキャラクターなので,ただ単に,美味しいものを食べたがるのではなく,きちんとキャラクターに沿った理由付けがなされるだけに,キャラクターとしての一貫性も保ちつつ,そんなキャラクターが忘我した表情を見せるからこそ,とてつもなく美味しいものなのではないかと,想像力を掻き立てられるのである. 

 

 もう一つの特徴としては,俊吾さんがなぜ失踪したのか,という謎が,設定されていること.これが,単なる,上記の舞台設定を作り出すためだけの謎なのか,それともきちんとストーリー的オチがあるのか,わからないのだけども.単発連作となりがちな,料理・食事漫画の中で,このようなストーリーがきちんと設定されているのは異色だし,読んでいて,起伏もあって飽きないものである.

 現在4巻まで刊行され,5巻もそろそろらしい.あまり引っ張り過ぎると,上記の謎解きがおざなりになりそうなので,勝手な希望をいえば,すぱっと綺麗に終わって欲しいところだったり…